知恵歓喜猫恋寒緩
先週の朝日俳壇に、顔がほころんだ。〈我が猫の恋の相手に落胆す〉寺杣(てらそま)啓子。稲畑汀子さんの選者評は「飼い主の落胆を誘う相手の猫やいかに」と、読者の興味を代弁していた。人の目には不細工でも、猫なりの審美眼があるのだろう。
その好みといい、知恵といい、生き物の営みは私たちの想像を絶する。小さな虫たちにさえ、歓喜や傷心があるかもしれない。「ふられたハエもやけ酒?」の記事に、あらぬことを考えた。
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米国の研究チームによると、交尾する気のないメスに無視されたオスは、アルコール入りの餌を好んで食べたという。交尾できたオスに比べて、満足した時に脳内で増す神経伝達物質の量が少なく、欲求不満を「酒」で埋め合わせていたらしい。
われら哺乳類の脳にも同様の物質があり、研究はアルコール依存の解明に役立つと思われる。むろん人の場合、やけ酒の「効用」に期待はできない。悩みの元は消えず、しばし忘れるだけである。
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一時の酔いが頭から追い払った「嫌な記憶」は、より重くなって心の底に刻まれる。そんなネズミの実験結果を、小欄で紹介したことがある。やけ酒はストレス解消どころか逆効果、どうかご用心を。
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冒頭の猫の恋は、早春の季語として知られる。寒が緩み、浮かれ猫が鳴き募る頃になると、左党は花見が待ち遠しい。桜を愛(め)でる一献は、思えば、やけ酒の対極にある風流。時節柄というのではなく、浮かれ過ぎず、沈み過ぎず、きれいに飲みたいものだ。これが難しい。
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